山本義隆で検索したものが他にもある。そう、2ちゃんねるだ。
「82 :ご冗談でしょう?名無しさん :03/12/31 12:23 ID:fXUMB7Bf
扱っている対象が違うということだと思うのだが.「重力と力学的世界」と「古典力学の形成」は表題通り力学がテーマ.「熱学思想の史的展開」は熱力学(あえて統計力学は扱っていないとのこと).
「重力と力学的世界」と「古典力学の形成」はテーマが重なっているけど...
前者は題名にもあるように重力(万有引力)という概念がどのように形成されてきたのかを詳しく扱っている.ただ,論理の展開は現代の力学の表記を使って解説してある.
後者は「プリンキピア」をかなり突っ込んで読み込んでいる.中身の定理の証明とかね.あとNewtonの人格なんかも批評.w
あと解析力学についてもLagrangeの原著をかなり突っ込んで扱っているかな.
83 :ご冗談でしょう?名無しさん :03/12/31 12:24 ID:fXUMB7Bf
「熱学思想の史的展開」はエントロピー概念の形成に関する著述.フロギストン説とエントロピー説を対立させて旧弊であるフロギストン説が打ち破られた--というような通俗的な科学史が的を射ていないことを検証している.
この3つの著述は扱っている時代もかなり重なっているし,お互いにリンクした部分も多いからどれから読まないといけない--なんてことはないと思う.
「磁力と重力」を読んでいるならわかると思うけど,山本義隆の本はみな重厚長大だからイチから読んでいくと途中で飽きてしまう可能性が高い.
できるならこの3冊は同時に購入して,目次を眺めて自分の興味を引くとこ
ろから拾い読みしていくのがいいと思う.
そうするとその前後にも関心がわいてきてだんだんと読んでいくようにな
る.
はなしが前後するけど,読者にある程度の物理的素養がないと受ける衝撃度
は低いかもしれないなあ.
たいていの大学の講義や専門書は進歩史観に則って書かれているので(その方
が教育的にも安直に導入しやすい),自然自然と自分のなかに進歩史観的なもの
が築かれてくるのだと思う.
その常識を破壊してくれるのがこれらの本だと思うので.
87 :ご冗談でしょう?名無しさん :03/12/31 17:11 ID:v8ht5X55
>>68
物理学科の学生は自力で読めばよいので、それ以外の人を念頭に置いて、>>82-83とは違った観点から紹介する。
『重力と力学的世界』(81年)は70年代後半の雑誌連載に大幅加筆したもので、連載当時の時代背景を考慮に入れて読む必要がある。
例えば、巻末近くでクーンのパラダイム論をひきあいに出しているあたりは
当時流行した言説の典型で、当時の山本にはまだ「他人の言葉」で語っている
箇所があちこち見られる。
近代物理学の形成過程を再検討するという山本の問題意識は、この本から
『磁力と重力の発見』まで一貫して変わっていないが、混入している70年代的
思想を切り分けながら読み進めるのはやや面倒。
>>68が何者かは知らないが、もしかして釈迦に説法か?
88 :ご冗談でしょう?名無しさん :03/12/31 17:12 ID:v8ht5X55
つづき。
『古典力学の形成』(97年)は『重力と力学的世界』から15年以上 たち、さすがに思想的にどうのこうのと言うことはなくなったが、3冊の中では最も物理学的素養を要する本。
「最後の魔術師ニュートン」とその後の世代を主題としていて、ニュートンが開発した力学を 大勢の天才秀才達が解析力学にまで定式化していく経緯を述べている。
数式でがっちり構築された解析力学に踏み込んでいく以上、かなり真剣に数式を追って力学の内容を把握する必要がある。
『熱学思想の史的展開』(87年)は『磁力と重力の発見』の次に読むのに適していると思う。
時間がないのではしょるが、『重力と力学的世界』ほど古臭くもなく、『古
典力学の形成』ほど 物理学的素養を要求することもない。ただし物理学的内容
は3冊の中では最も難しい。
数式を追うのが難しいのではなく、熱力学自体が力学よりもかなり難しい。
過去を忠実になぞる能力と、新しいものを作る天才の能力とは全く別物だよ。」(引用終り)
「ID:fXUMB7Bf」は「。と、」でなく「.と,」を使っているので、普段論文を書いている物理屋さんかもしれない。
2ちゃんねるはレベルが高い。(笑)
ところで、大佛次郎(おさらぎ じろう:念のため)賞というのはこんなところまでカバーしているのか?
以下は、朝日新聞の記事らしい。選考委員が嗤わせてくれる。どこをどう読んで選んだのだろう。
「優れた散文作品に贈られる第30回大佛次郎賞は、朝日新聞社が委嘱した選考委員による選考の結果、次のように決まりました。
山本義隆氏『磁力と重力の発見』全3巻(みすず書房)
山本氏には賞牌(しょうはい)と副賞200万円を贈ります。
贈呈式は来年1月28日、東京・日比谷の帝国ホテルで、朝日賞、大佛次郎論壇賞とともに行います。
◇選考委員
池内紀、井上ひさし、奥本大三郎、富岡多惠子、養老孟司(50音順 敬称略)
■主催:朝日新聞社 (12/19)」
「35 :ご冗談でしょう?名無しさん:03/12/21 17:33 ID:EB+z3KDI
それにしても、他の選者の選評がイタいね。「数式が出てきたら頭痛」とか「縦書きなのが親しみやすい」とか...
そんなもんなのかな?こういう内容ならむしろ横書きの方がはるかに読みやすいと思うんだが...
36 :ご冗談でしょう?名無しさん:03/12/21 17:39 ID:???
養老はなんて書いてたの?
39 :ご冗談でしょう? 名無しさん:03/12/21 18:03 ID:s/GKLBEw
>>35 んでは, 朝日新聞 12/18 長官 p.18 から無断転載したる.
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山本氏のこの著作は,すでに毎日出版文化賞を受賞されている.
それにさらに朝日新聞から大仏次郎賞が授与される.
そのことから見ても,本書自体の価値がわかると思う.
評者自身, 両賞の選考委員を兼ねている.
西欧科学の歴史を語るとき, 日本からの視点はきわめて貴重である.
どのような文化もそれ自体の盲点を持ち,西欧も例外ではない.
著者の目はそこをみごとに見通す.
次に個人的な意見を付け加える.
私自身はこの著作をこれ以上に論評する気がない.
それは右の価値評価とは別である.
強く表現するなら, 選評を拒否する.
私自身は, 山本氏と同じく60年代末に,演じた役割の軽重はあれ, 同じ東大闘争に巻き込まれた.
その結果,私は自分の考え方,さらにその後の研究者としての生涯に多大の影響を受けた. 私はそう思っている.
その結果としての私の思想からすれば,まったく別な論評も可能である.
しかしそれは,かならずしも書物自体の論評ではないという性格のものになるはずである.
そうしたことを熟慮した結果, 背景を含めた選評は拒否するしかないという結論に至った.
それ以上の説明はいまは不可能だし,そもそも紙面も不足である.
読者のご了解を乞う.
====」
「長官」はもちろん「朝刊」である。私も無断で転載した。
養老孟司って山本義隆と同じ世代なのか。私は60年代末に東大にいなかったので(笑)何も知らないが、何があったのだろう。
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