「将軍様の鉄道 北朝鮮鉄道事情」(国分隼人著:新潮社刊)
北朝鮮の鉄道路線図、時刻表などが載っている。写真も多く楽しめる。これらの資料を一体どうやって手に入れたのだろうかと感心した。
路線図などはGoogleEarthを見ながら楽しめそうだ。ただ、駅名は漢字とカタカナで書かれているので、ハングルを知らないと現地では役立たないだろう。
不謹慎だが、ちょっと行ってみたくなった。(わたしは帰って来られなくなりそうなので、金王朝が倒れるまではやめておくが。)
「鉄道電化先進国!」という思いがけない指摘があった。
「北朝鮮では、2004年時点で、国内にある5235㎞の鉄道路線のうち、実に80%が電化されている。つまりお隣の韓国はもとより、日本の鉄道よりも鉄道電化に対しては先進的なのである。
北朝鮮では、1950年代から国の発展策の一環として鉄道電化に邁進した。これにはもちろん、鉄道電化=鉄道近代化と考えた政府の判断もあるだろうが、もっと深い理由がある。エネルギー事情である。
北朝鮮は北部に多くの地下資源を抱えている。日本とは異なる、資源保有国なのである。しかし、もっとも必要な石油だけは取れない。
国の方針として金日成主席が打ち出した、「自力更生」のスローガンにより、すべてのものは自国で賄われるべきだとしたため、輸入に頼らざるを得ない石油の使用はできるだけ控えられるようになった。そして石炭と水力による発電のみを重視する政策が進められることとなったのだ。
ちなみに、当時アジア最大級であった水豊発電所など、戦前に日本が建設した大規模な水力発電施設がいくつもあり、もともと電力事情には恵まれていたのである。
しかし、そこには独裁国の悲しい事情がある。国のリーダーが宣言した方針はそのまま一人歩きを始め、1971年に打ち出された「人民経済発展6カ年計画」により、北朝鮮全線を電化する計画は歯止めを無くして突き進むこととなった。
鉄道車両は電気機関車ばかりを開発することになり、バスは架線から集電する無軌道電車(トロリーバス)に変更され、都市交通を充実させるため地下鉄や路面電車を新たに作り・・・・・。
そして電気は足りなくなった。」(P39~P.40)
トロリーバスか、懐かしいな。
わたしが子供のころは、渋谷でもトロリーバスが走っていた。架線が都電と重ならないようにだと思うが、今の西武百貨店の前から、JRの下をくぐり、明治通りを新宿方面に向かっていたと記憶する。どこ行きだったのかは覚えていない。少なくとも都電とは交差しないように走っていたのだろう。
最近のコメント