「山からの絵本」(辻まこと著:創文社刊)をブックオフで購入。美本だし、補充注文カード(売上カード)がはさまったままだし、万引きされた本かもしれない。
奥付には、1966年第1刷、2002年第15刷とあるから、息の長い本だということがわかる。同じ本を2冊も3冊も買ってしまうことはよくあるが、こんどはすでに持
っているとわかっていて買った。定価3,200円のところ、1,000円で手に入れることが出来た。
帯にはこうある。
「これは素晴らしい大人の絵本だ、現代文明への作者のアイロニーだ、などとオヤジは言うが、若いボクらには理窟ぬきに楽しい本だ。うまい文章、次々に登場するオカシな人物や愛すべきケモノたち・・・・。いつのまにかボクらは都会の騒音や人口過密がまるで嘘のような、森と湖の日本の秘境へ誘い込まれる。美しい色刷り挿画16枚、単色挿画37枚入り豪華版。」
辻まことの本は、名前が同じ「まこと」ということで読み始めた。漢字では「辻 一」と書くので漢字は違うのだが、きっかけはなんでも良いのだ。
辻まことは、ダダイストの辻潤と伊藤野枝の子だ。伊藤野枝が押しかけ女房のような形で辻潤と結婚してできた子だ。その後、伊藤野枝は色男のアナーキスト・大杉栄のもとに走った。
なにしろ、辻潤の方は、「おれは天狗になったぞ」と叫びながら二階から飛び降り、脚の骨を折るという人だから、逃げられても無理はないと思うが。
そんな人が書いた、辻潤著作集(オリオン出版社刊:全6巻、別巻1巻)なんていうのまで私は持っている。
大正12年、大杉栄と伊藤野枝は甘粕大尉に殺されたとされる。そのとき一緒に殺害された子供は、辻まことと間違えられたのだという説もある。
このような育ち方をした人がどんな気持ちでこのような画文集を書いたのかはわからない。
このほかにも、「山で一泊」「すぎゆくアダモ」(創文社刊)、「山の声」(東京新聞出版局)など多くの画文集を出している。
いつか「辻まこと全集」がみすず書房から出そうだというのを知って、みすず書房の営業部に電話をしたことがある。忙しいのにもかかわらず丁寧な応対をしてくれた。箱入り(函ではなく)で、いろいろな大きさの本を詰めることになっているということだった。
いくらくらいになるのか聞いてみて、とても手が出ないし、ある程度の本はすでに持っているので、諦めた。確か4,5万円したはずだ。いまでも買えない。
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