今後も「2ちゃんねる」ネタが多くなると思うので、2ちゃんねるそのものを話題にしよう。2ちゃんねるそのものは考察に値すると思うが、自分でやるのは無理なので、人のフンドシを借りることにする。
「2ちゃんねるが盛り上がるダイナミズム」と題する論文がある。平成16年3月の情報処理学会論文誌に載った。その前の年に、著者は同じだが、人工知能学会誌にも出ていた。
アカデミックな世界にも”2ちゃんねらー”は多そうだが、まさか学術論文になるとは思わなかった。
「はじめに」で、「”便所の落書き”のような情報を見るために毎日数十万人もの人が2ちゃんねるを訪れているとはとても考えられない」と書いている。そりゃそうだ。
「2ちゃんねるが盛り上がるメカニズムを解明するための手がかりとして、2ちゃんねるを特徴付ける8指標C(Contents)、A(Activity)、I(Interaction)、S(Speed)、V(Vocabulary)、AA(ASCII Art)、N(Nameless)、ABON(あぼーん)を提案する。
Cはメッセージごとに交わされる議論の量を測る指標であり、2ちゃんねる語、アスキーアートを除いた1メッセージ当たりのサイズ(バイト数)とする。
Aはスレッドの盛り上がりを投稿数によって測る指標であり、1スレッドあたりのメッセージ数とする。
Iは参加者同士がインタラクションしている程度を測る指標であり、1メッセージあたりの平均返信数とする。
Sはスレッドの盛り上がる早さを測る指標であり、1日あたりに投稿されるメッセージ数とする。
Vはスレッドの2ちゃんねるらしさを測る指標であり、スレッドのサイズに占める2ちゃんねる語のサイズとする。
AAはスレッドにアスキーアートがどれくらい使われているかを測る指標であり、スレッドのサイズに占めるアスキーアートのサイズとする。
Nはメッセージが名無しで投稿されている程度を測る指標であり、1メッセージあたりの名無しで投稿されるメッセージ数とする。
ABONは議論が荒れている程度を測る指標であり、1メッセージあたりの2ちゃんねるの管理人によって削除されたメッセージ数とする。」
これらの指標をもとに、共分散構造分析を用いて因果モデルを構築する、とあるが何のことか分からないので、結論らしきものを引用する。
「以上のことから、2ちゃんねるの参加者は定型的固有表現と名無しをうまく使い分けることで2ちゃんねるというコミュニティを維持し、多様なコミュニケーションを楽しんでいることが明らかになった。
定型的固有表現という2ちゃんねる独自の文化を共有していない人が2ちゃんねるのスレッドを見ても、ただの便所の落書きにしか見えないかもしれない。しかし、定型的固有表現を共有している2ちゃんねるのユーザにとっては、2ちゃんねるはその文化のなかで繰り広げられるコミュニケーションとして成立しているのである。」
「さらに、2ちゃんねるではスレッドごとに議論すべきテーマが与えられているので、参加者が共有する関心は非常に多岐にわたる。以上のことから、2ちゃんねるは従来のコミュニティの定義にあてはまらない、インターネットの発展がもたらしたまったく新しいコミュニティの形態をなしていることは明らかである。しかし、その背後には定型的固有表現や名無しなどによって生まれる2ちゃんねる独自の文化が根づいているのである。」
2ちゃんねる語とは「がいしゅつ(既出)、氏ね(死ね)、串(プロクシ)、鯖(サーバー)、オマエモナー」などを指す。(括弧内は私の註です)
”ながくROMっていてやっと近頃、いくらか分かってきた。「元木氏ね」”という風に使うらしい。
私がやるなら、社会学的にレスの中身を吟味してみたい。
「”2ちゃんねる”を見ると、たしかに各分野ですごい造詣を持った人が多い。しかし、彼らは別に自分の主張が正しいとか、”みんなもそう見ろみたい”な押し付けがましさはない。世間は世間、オレはオレでこう見る、風な。」(高山正之著「歪曲報道」から)と評価する人もいる。ということで、メッセージの内容を取り上げるのはとても難しそうなのだ。
ところで、外国には2ちゃんねる文化というものはないのだろうか。
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