「硫黄島(いおうとう)栗林忠道大将の教訓」(小室直樹著:ワック刊)
「現代の日本人には余り知られていないが、『大空のサムライ』こと坂井三郎飛行士は、敵機六十四機を撃墜し、しかも列機を一人も死なせなかった日本の撃墜王である。著書『大空のサムライ』は“SAMURAI”のタイトルで、世界各国でベストセラーを記録した。
アメリカでは宇宙船アポロのアームストロング船長らとともに「空の英雄二十傑」の一人にも選ばれて、今も敬意を表されている。
日本で忘れられ、欧米で敬意を払われている点は、アメリカが選んだ世界の猛将十傑の一人、栗林中将と共通している。
では何故、日本では余り知られていないのか。彼は海軍兵学校も出ていない。海軍大学も出ていない。少年航空兵の受験にも失敗して、一般海軍志願兵に応募して戦闘機乗りになった。そういう兵士はどんなに手柄をたてようと、余り出世できない。日本は昔から学歴主義だから、そんな人を称えても仕方がないと考える。
坂井氏は平成十二年に惜しくも亡くなられたが、葬儀には厚木の米軍が大挙して参列した。日本の自衛隊からは空軍の幕僚長から花輪と弔電が届いただけであった。
その翌月には、世界の空の英雄に対し厚木基地の米軍が弔意の飛行をすることになっていたが、中東での緊急事態のため取り止めになった。
代わりに、翌年、アメリカのテキサスで坂井中尉に弔意を表す儀式が行われた。帰国された坂井夫人の話では、遙か遠くからF15戦闘機が三機飛来し、中央の一機だけがどこまでもどこまでも上昇を続け雲の彼方に消えていった。さながら坂井氏の魂が天に帰っていくような感動的な光景で涙が止まらなかったという。
日本では全く何の追悼行事も行われなかった。」(P.160)
私も思わず涙が出そうになった。アメリカのフェアー精神とはこういうことを言うのだろう。
戦争は政治の延長だというが、戦うものには政治を越えた何かがある。よく戦かったもの同士には通じ合うものがあるということか。
「日本はこのような名誉ある兵士のために、何の追悼行事もない。
軍人は何のために命を投げ出せるのか。皆さん考えたことがありますか?
名誉があるから命を投げ出せるのだ。
名誉のない軍隊ほど弱いものはない事を、歴史は証明している。
栗林中将は未だに日本人の尊敬を集めていると、アメリカ人もイギリス人もそう考えている。それが当然であろう。しかし、実際はどうか。日本の領土、硫黄島(いおうとう)すら知らない。」
「ポツダム宣言はその本文において、「我らの条件斯くの如し」と書いてあるが、無条件降伏ではなく有条件降伏となった。アメリカが、日本とだけは二度と戦いたくない、という確信を持つことによって、安全保障条約が成立した。翻って考えるに、初期の安全保障条約はアメリカが無償で日本を守るということである。御陰で日本は国防費を使うことなく、その費用を全て経済再建に当てることができた。」(P.2)
それもみな硫黄島の激戦の賜物である、と小室直樹はいうが、硫黄島だけではあるまい。
戦後の経済発展は先人のお陰である。来年の8月15日も靖國神社にお詣りをしよう。
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