「本が好き、悪口言うのはもっと好き」(高島俊男著:大和書房刊)を読んでいたら、最後に“回や其の楽(たのしみ)を改めず”に狩野亨吉(かのう・こうきち)の話があり面白かった。
「世の中に記録好きとかメモ魔と言われる人はよくあるが、この人はケタが一つはずれている感じがする。
若いころから自分の一物の怒張時と萎縮時の寸法を計測して記録したとか、マスターベ-ションするたびに「射精感美快」「普通」などと記録しておくとか、その上顕微鏡を買って来て自分の精子の運動を観察記録するとか・・・そんなことをする人がまたいようとは思われない。」(P.237)
顕微鏡を買ってきて自分の精子の運動を観察するというのは、私もやった。「そんなことをする人がまたいようとは思われない」と言うようでは高島俊男さんもまだ甘いな。
顕微鏡も600倍くらいでないと見えない。これには感動した。ぜひ、皆さんも試してみることをお勧めする。ただし、資料の採取に関して当方は関知しないのでそのつもりで。
「狩野亨吉は、明治期に学者・教育者として、大正から昭和にかけては、市井の高士、陋巷(ろうこう)の碩学(せきがく)として知られた人である。京都帝国大学教授から町の骨董屋になり、終生娶らず、浮世絵ワ印の収蔵をもって聞えた。まあ奇人である。」(P.223)
狩野亨吉は東京帝国大学の数学科を出ている。
のちに京都帝国大学の学長になり、そのとき幸田露伴を京大の講師にしてしまった。寺子屋で学び、学校らしい学校を出ていない幸田露伴を、洋行帰りの人たちをさしおいて大学に迎えようとしたのだから大問題となったらしい。
幸田露伴は京都帝国大学教授になれたことをたいへん喜んだそうだが、こちらの方も実はろくに京都へは行かなかったようだ。
「狩野亨吉の生涯」(青江 舜二郎著:中公文庫)はamazonで二千円した。読んでみたいのだが、文庫なのに部厚いのでまだ繙かずにいる。
ところで、「本が好き、悪口言うのはもっと好き」というのはいいなあ。「社長ブログ」なんていうんじゃなく、これにすればよかった。
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